展示STと本番ST、相関はほぼゼロ?!|69万件のデータで検証してみた【中級者向け】

展示ST×本番STを検証|Boat-V ブログ 予想を読む

「展示のスタートが良かった選手は、本番も期待できそう」——展示タイムと展示STの見方を読んだ方なら、一度は思ったことがあるはずです。この記事では、その素朴な予想が実際にどれくらい当たっているのか、Boat-Vのデータベースにある約69万件の展示ST×本番STのペアデータで検証してみました。

まず結論から:本番STは展示STより遅い、でもほとんど無相関

Boat-Vのデータベース(2024年1月〜、選手・レースごとの展示ST実測値と本番ST実測値のペア約69万件、フライング気味の展示記録は後述の理由で除いています)で平均値を比べると、次のようになりました。

展示ST平均 0.117秒 本番ST平均 0.163秒 差 +0.046秒 Boat-Vデータベース・展示ST×本番STのペア約69万件(2024年〜)
本番STは展示STより平均0.046秒遅い。ほぼ全選手が同じ向きの傾向を示す

本番STは展示STより平均で0.046秒遅くなっています。これは一部の選手だけの傾向ではありません。十分な出走数(200レース以上)がある選手約1,540人で見ても、下位10%の選手でも+0.02秒、上位10%の選手でも+0.07秒と、ほぼ全選手が同じ向きのズレを示していました。

ところが、「では展示STが良い日は本番STも良いのか」という相関を計算すると、係数はわずか0.07。選手ごとに個別に計算しても平均0.03程度で、統計的にはほぼ無相関です。つまり、「本番は展示より遅くなりがち」という方向性は非常に強い一方、その日の展示STの数字そのものは本番STの予測材料としてほとんど当てにならない、という一見矛盾した2つの結果が出てきます。

なぜ最初の集計は歪んでいたか

ここまでの数字にたどり着く前に、実は一度足踏みしました。最初に全データをそのまま平均したところ、差はもっと大きく(+0.082秒)出ていたのです。

原因は、フライング・出遅れ、罰則の全てで触れたとおり、展示走行(練習)自体にはフライングの罰則がないことでした。本番でフライングをすれば厳しい出場停止が科されますが、展示では選手が試しに早めにスタートラインを切ることが日常的に行われています。実際に調べると、展示STの記録全体の21.5%が「フライング気味(スタートより早い)」の値でした。この記録を含めたまま平均を取ると、展示ST側の数字が実態より速く出てしまい、本番との差を過大に見せていたのです。フライング気味の記録を除いて集計し直したのが、冒頭の+0.046秒という数字です。

核心:展示で早く踏んでも、本番STは変わらない

ここが今回いちばん興味深かった発見です。展示でフライング気味に早く踏んだ艇(全体の21.5%)と、そうでなかった艇とで、実際の本番STを直接比べてみました。

0秒 展示ST フライング気味 -0.053秒 展示ST 通常の入り 0.117秒 本番ST フライング気味の後 0.161秒 本番ST 通常の入りの後 0.163秒 ほぼ同じ
展示での入り方が違っても、本番STの平均はほぼ揃う(0.161秒 vs 0.163秒)

展示ST自体は大きく違います(-0.053秒 vs 0.117秒、差にして0.17秒)。ところが本番STを見ると、フライング気味に早く踏んだグループが0.161秒、通常の入り方のグループが0.163秒と、ほぼ同じ水準に揃っています。展示で目立って早いスタートを切っても、それが本番の実際のSTに反映されるわけではないという、かなり明快な結果です。

クラス・支部・会場・性別——切り口を変えても結果は同じ

「特定の選手層だけの話では?」という疑問にも答えておきます。クラス・支部・会場・性別で区分して、それぞれの中で相関係数とバイアスを計算し直しました。

切り口 区分数 相関係数の範囲 バイアスの範囲
クラス(A1・A2・B1・B2) 4区分 0.03〜0.11 +0.042〜+0.048秒
支部 18支部(サンプル十分な支部のみ) 0.05〜0.09 +0.042〜+0.055秒
会場 24会場(全会場) 0.04〜0.10 +0.024〜+0.055秒
性別 男性・女性 0.07〜0.08 +0.041〜+0.047秒

どの切り口で区切っても、相関係数は0.1程度が上限で、「予測に使える」と言えるほど強い相関を示す区分は一つも見つかりませんでした(ただしクラス別ではB2級が0.11とやや高めで、他の3クラス〔0.03〜0.05〕より相関がやや強い傾向は見られます)。「A1級のトップ選手なら違うのでは」「支部によって違うのでは」「会場によって違うのでは」「男女で違うのでは」——どの角度から疑ってみても、大きな相関を示す区分は見つからなかったということです。一方でバイアス(本番の方が遅い傾向)は、どの区分で見てもプラス方向で一貫しており、こちらは属性を問わず共通する傾向だとわかります。

じゃあ展示STは何のために見ればいいのか

ここまでの結果は、展示タイムと展示STの見方で述べている使い方——同じレースの6艇を並べて相対的に比較する——が正しいことを裏付ける形になりました。展示STの絶対値(0.1秒台前半か後半か)を「本番でもこの通りの速さになる」と読むのではなく、「同じレース・同じ条件の中で、他の艇と比べて相対的に速いか遅いか」を見る材料として使うのが、実データからも理にかなっている、ということです。

よくある質問(FAQ)

Q. 展示STが良かった選手を信頼しない方がいいということですか? A. いいえ。今回の検証は「その日の展示STの絶対値」が「その日の本番STの絶対値」を予測する力がほぼ無い、という話です。同じレース内で他の艇と比べて展示STが目立って良い・悪いという相対的な見方は、展示タイムと展示STの見方で紹介しているとおり引き続き参考になります。

Q. なぜ本番の方が展示より遅くなる傾向があるのですか? A. 明確な理由はデータからは断定できませんが、展示は練習でありフライングの罰則が無いぶん、選手が試しに早めのタイミングで踏みやすい一方、本番は隊形やタイミングを見ながらより慎重に、あるいは他艇との駆け引きの中でスタートを切るため、と考えられます。

Q. クラスや支部、会場によって傾向は違いますか? A. クラス(A1・A2・B1・B2)・支部・会場・性別のいずれで区切っても、相関係数は0.1程度が上限で、突出して強い相関を示す区分は見つかりませんでした。「本番の方が遅い」というバイアスの向きも、どの区分でも共通しています。

Q. この集計はどのデータを使っていますか? A. Boat-Vのデータベースにある2024年1月以降の展示ST実測値と本番ST実測値を、会場・日付・レース番号・艇番で突き合わせたペアデータ(約69万〜88万件、集計の条件により変動)を使っています。

次のステップ


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